菓子盆殺人事件 解答編
「ダ・ヴィンチ・恐山さんを殺害した犯人『地獄の盆術師』は……」
「あなたです!!!」
「原宿さん!!!!!!」
「な……ッ!!」
「あなたがダ・ヴィンチ・恐山さんを撲殺したんです!!」
「嘘……! 原宿さんが…?!」
「待ってくれ!! 凶器なんてどこにもないだろ?!」
「それがあるんです。原宿さんの盆の上に、ね」
「原宿の盆というと、これか」
●焼きめざし(なるみ物産)
●あんずボー(ミナツネ)
●アンパンマンペロペロチョコレート(不二家)
「人を殴り殺せるほど堅いもの…?」
「焼きめざしで殴ったとでも!? めざしはフニャフニャですよ!」
「いいえ、あります。形を変えて…」
「あっ!!!!」
「あんずボーをカチカチに凍らせれば……!」
「確かにあの強度なら充分に人を殺せる…!」
「お菓子のことを知り尽くした盆師ならではの凶器ね…」
「それを溶かして盆の上に撒けばカムフラージュは完璧。悪趣味な装飾に見せかけて証拠品の形状を変え、気を逸らしていたんですよ」
「なるほど…。『溶かす』、メダルチョコのダイイングメッセージはこういう意味だったのか…」
「ですよね、原宿さん?」
「ふふふふ…」
「ハーッハハハハハハ!! そうだよッッ!! 俺がやったんだよぉ!!!」
「いつもいつも偉そうに『破門です』だぁ?! 俺の芸術を理解できない凡人は生きている価値がないからなぁ!!」
「アイツの大好きなお菓子で葬り去ってやったよ!!!! ハーッハッハッハッハ!!!!!」
「ハハハハっ!!! ざまあみやがれ!!! 何が菓子盆1級審判だ!! そんな資格この世に存在しねえよ!!!」
「それにしてもメダルチョコのダイイングメッセージとはなぁ…! 最後の最後までうっとおしい奴だ!!」
「それはどうでしょう…?」
「あ…?」
「あのメダルチョコは本当にダイイングメッセージだったのでしょうか?」
「何を言って…」
「私にはもっと別の何かに見えますが…」
「ちょっと失礼…」
「何か書いてある…?」
「『原宿さんへ』…?!」
「思った通り、これはメダルチョコじゃない…。本物の金メダルです」
「ど、どういうことだ…?」
「そう言えば聞いたことがあります…。恐山は本当に実力を認めた盆師にだけ金メダルを贈呈する、と…」
「有名な話だな。いつまで経っても俺に贈呈されないから都市伝説の類だと思っていたが」
「私も金メダルは頂いてません」
「そんな貴重なメダルを、原宿さんに…?!」
「な、何を…! 『破門だ破門だ』と毎回言ってたじゃないか…」
「つまりこういうことですか。『自分の流派とは違うが実力は認めていた』と」
「もし今回も諦めずに己のスタイルを貫いていたら、恐山はその金メダルを渡すつもりだったんだろうよ」
「原宿さんの菓子盆を1番愛していたのは、恐山だったのかもしれませんね…」
「そ、そんな……。お、俺は……、何てことを………」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
第九回優勝は原宿さんです……
うらめしい…うらめしい……
原宿さん…
次こそは美しい菓子盆を…
「うう、恐山……! すまない……! 俺は…、俺には…お前が眩しすぎたんだ……! いつも日の当たらない俺にとって、お前の照らす光は強すぎたんだよ………!!」
「………」
「………」
「さあ、もう行きましょう…。警察の方が来ています…」
「うう……、恐山…、恐山………! ごめんなぁ……! いつだってそうなんだ…、俺は生きてるだけで人に迷惑かけちまう……」
「ああ…、菓子盆も人生も……、うまいこといかんかった……」
「悲しい…、とても悲しい…、事件ね…」