同じ菓子盆を繰り返すくらいなら、死んでしまえ。
―岡本太郎
「お菓子チョイスのセンスで、その人の全てがわかる」をモットーに開催されてきた菓子盆選手権。
「何の変哲もない菓子盆の上に、好きなようにお菓子を盛る」たったそれだけで、盛る人間の人格や人生が現れてしまう…。何をどんなに隠そうとも、菓子盆には全てが出てしまうのです…。そう、全てが……。
さて、そんな菓子盆選手権の第九回をお届けするわけですが、菓子盆メンバー達は今回いつもと違う場所に来ています。
高原まで菓子盆合宿にやってきたメンバー一同。今回の菓子盆選手権は新緑美しい大自然に囲まれて行われます!
つまり今回のお題はこういうことです!
これからの季節にピッタリのお題です。みなさんも菓子盆を持ってアウトドアに行く際はぜひ今大会を参考にしてみてくださいね!
↓菓子盆選手権の基本ルールをまとめたものがこちら。
そしてもちろん、菓子盆の審査をするのはこの人!
日本で唯一の菓子盆1級審判、ダ・ヴィンチ・恐山です。
品田遊名義で作家としても活躍する彼は、現在日本でただひとり菓子盆を評価することが…
え?!
ダ・ヴィンチ・恐山?!?
し…、
死んでる……
「キャーーーー!!!」
「お、おい! どうなってんだよ、これ!!」
「ウ、ウソだろ?! ウソだよな…?」
「え? じゃあ今回の菓子盆選手権はどうなるんですか?!」
「おい!! 人が死んでるんだぞ!! それどころじゃねえだろが!!」
「ひっ! そ、そりゃあ、そうですよね…」
「この中に殺人鬼がいるかもしれないし…」
「さ、殺人鬼…?」
「……言われてみれば、このペンションには私達しかいないはず」
「お、お前さっき『トイレ行く』とかなんとか言って、10分くらいいなかったよな?!」
「何よ! アンタだって『盆に集中したい』って、どっか行ってたじゃない!」
「みなさん、落ち着いてください」
「落ち着いていられるか! この中にダ・ヴィンチ・恐山を殺した奴がいるんだぞ!?」
「大丈夫です。私には犯人がわかります」
「はあ?!」
「いや、『犯人がわかる方法がわかる』と言った方が正しいか…」
「何よそれ! どうすればいいのよ!」
「菓子盆を作りましょう」
「へ…?」
「この非常時に何をふざけて…」
「私を…、いえ、菓子盆の力を信じてください」
「盆は全てを物語る」
エントリーNo.1 永田
「用意してきたアウトドア盆を作れって? チッ、そんなんで何がわかるんだか…」
悪態をつく永田のアウトドア菓子盆はこちら…
●あみじゃが(東ハト)
●ハッピーターン(亀田製菓)
●マシュマロ ホワイト(エイワ)
●ひもQ(明治)
「高原でのテニスをイメージして、ラケットみたいな形のあみじゃがを選択したんだ」
「ハッピターンやマシュマロなど、全体的にポップなお菓子を配置したよ。まさかこんなことになるとは思わなかったからな…」
~ 会場の反応 ~
「名探偵サンよ、これで何かわかったか?」
「ふーむ、そこにひもQですか…」
「確かに、ひもQだけ色味が合わないわね」
「な、何だよ。ひもQは食べる時にみんなで遊べるからいいかな、と…」
「あ!!! わかった!!!!!」
「え? 何が?」
「つまりこういうことですよ…」
「永田さんがひもQを使ってダ・ヴィンチ・恐山を絞殺したんです…」
「な…?!」
「ほ、本当なの…?!」
「おいおいおいおい! 待ってくれ! ひもQの強度じゃ首を締めるなんて無理だって!!」
「それに見てくれ! 絞殺だったら、首に跡が残るはずだろ?!」
「確かにそれもそうね…」
「僕の早とちりか…」
「ったく、勘弁してくれよ」
「………」
アウトドア盆というテーマに「楽しさ」を武器に斬り込んだ永田。盆の色味の悪さを指摘されましたが、審査員であるダ・ヴィンチ・恐山の霊はこのへんをどう見るのでしょうか?
無念…、ああ無念…。
いつもの永田さんの盆に比べて精細を欠くのは極限状態だから仕方がないのでしょうか。それでも「ひもQ→マシュマロ→ハッピーターン→あみじゃが」と、甘さのグラデーションがさりげなく描かれている点については流石の手腕と言えます。全体的に軽い食感のものが多く、アウトドアの楽しさとマッチしていますね。場にそぐわないひもQは、絡まった紐のような混乱の表れ? それとも……?
極限状態でも常に一定のクオリティを保っていた永田盆。果たしてそこにヒントは隠されているのか……?
エントリーNo.2 モンゴルナイフ
「私、本当に何も知りません…。信じてください…」
怯えるモンゴルナイフのアウトドア菓子盆はこちら…
●うまい棒 めんたい味(やおきん)
●ラムネ(森永製菓)
●ミニドーナツ(夢クリエイト)
●蒟蒻畑(マンナンライフ)
●オーザック あっさり塩味(ハウス食品)
●いちごみるく(サクマ製菓)
「アウトドア盆ということで、みんなでシェアしやすいお菓子を選んだんです…」
「行楽シーズンにピッタリの楽しい盆になるといいなって…、そう思ってたのに……、うっ、ううっ」
~ 会場の反応 ~
「おいおい、泣くなって」
「ふ~む、シェアしやすいお菓子にうまい棒、ですか…」
「そこは僕も疑問に思いました」
「おや…? このうまい棒、何か削れた跡が…」
「かじった跡?」
「一体どういうことだ?」
「そうか! そういうことだったのか!」
「え? 何かわかったんですか?!」
「ああ、つまりこういうことだ」
「モンゴルナイフが、うまい棒を吹き矢代わりに毒矢を発射したんだ!」
「なるほど…。それならうまい棒が削れていた説明もつくな」
「さあ、事件は解決だ! この女を椅子に縛り付けて、警察を待とう!」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ! 毒矢なんてどこにもないでしょ?! うまい棒が削れてただけで逮捕されるなんておかしいわよ!」
「じゃあ、あの削れは何だって言うんですか?」
「お腹が空いたからちょっと食べちゃったのよ~~~!!! びえ~~~ん!!」
「ただ食べただけ?」
「う~ん、まあ確かに毒矢も見つかってないし、うまい棒だけじゃ何とも…」
「ふん、どうだかな…? 今に毒矢が見つかると思うぜ?」
「………」
オーソドックスにまとめられたモンゴルナイフの菓子盆。うまい棒をかじってしまうというミスがどう響くのか? ダ・ヴィンチ・恐山の霊の評価は果たして?
恨めしい……恨めしい……。
モンゴルナイフさんの盆は一見すると印象に残らないかもしれません。しかし、それでいいのです。アウトドアにおける主役は菓子ではなく、時間を共有する楽しさなのですから。なんとなく手を伸ばし、気づいたらなくなっていた……そんなさりげなさがこの盆の魅力と言えるでしょう。菓子のチョイスもただ無難どころを抑えるのではなく、オーザックやミニドーナツなど「本当に好きな人」という感じがして好感触でした。
うまい棒がむき出しなのは、開放感の現れなのでしょうか……それとも……。
うっかりうまい棒をかじってしまったものの、なかなかの高評価。アウトドアにふさわしいさりげない盆と評されました。ここに何か手がかりがあるのでしょうか?