飴に生命が宿る!? 浅草の「飴細工 アメシン」で超リアルな飴細工を体感してきた

みなさんは飴細工というものをご覧になったことはありますか? 飴細工は熱した砂糖を使って自在に形を変えて、様々な造形物を作るというもの。浅草に拠点を置く「飴細工 アメシン」は、飴とは思えないリアルな造形物を作ることで定評があります。今回は「飴細工 アメシン」にお邪魔して、その驚きの技を見せてもらってきました。ぜひみなさんもご覧になってみてください。(浅草のグルメカフェ

飴に生命が宿る!? 浅草の「飴細工 アメシン」で超リアルな飴細工を体感してきた

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こんにちは、バーグハンバーグバーグのまきのです。

ここに来ようと思って家を出ようとした瞬間に家が爆発してしまい、命からがら逃げてきました。そのおかげで髪の毛がめちゃくちゃになってしまいましたが、何卒ご容赦ください。

 

それはさておき、わたしは今浅草のとあるお店に来ています。なんでもここは「浅草 飴細工 アメシン」という工房 兼 店舗で、すごい技術の飴細工が楽しめるらしいのです。

 

 「アメちゃん」といえば様々な色がついた個包装の甘~いやつで、おばちゃんのカバンの中にほぼ100%の確率で入っているアレか、もしくは漫画に出てきそうなペロペロキャンディを想像しそうですが、ここではどんな飴が作られているのでしょうか。

 

  

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店舗の中に入ると、こんな感じで何かが飾られています。日持ちさせるように乾燥剤とともにビニール袋に包まれているのですが・・・まさか、これが・・・?

 

 

 

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えっこの金魚なに? アメちゃんなの!?!? うそでしょ!?

今にも水の中に入れたら動き出しそうな躍動感ですけど!?

 

 

  

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タコだ~! この質感や色、マジのタコじゃん! どうなってるの!??

彩色に関しては、合成着色料ではなく天然由来の食用色素を使用しているそう。タコのリアルなこの色も、体には何の影響もありません。

 

 

 

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これは完全にガラス工芸だろ!と思ったんですが、どうやらこれもアメちゃんのようです。嘘だと言ってよ・・・凄すぎるよ・・・。何なのよ・・・。

 

 

 

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これらのスーパーグッド飴細工を創りだしているのが、浅草飴細工 アメシン代表の手塚 新理(しんり)さん。この胴体から生えた二本の腕の先にある「手」と呼ばれる部位から、日々このような"作品"が生まれているのですね・・・。

 

 

  

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使用するのは小さなバーナーと専用のハサミ。アメちゃんは空気に触れるとすぐに固まってしまうので、すばやい作業が必要なようです。みるみる金魚が整ってゆく・・・。

 

 

 

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早速で恐縮ですが、わたしもチャレンジしてみたいと思います。こう見えても小学生のような絵は描けるので、アート方面で豊かな才能とほんのちょっぴりの勇気はあると自負しております。

「金魚から作るぞ〜!」と声高に宣言しましたが、「金魚は初めての人が作るにはかなり難易度が高いので、体験教室で最初にやる『うさぎ』でチャレンジしてみましょう」という手塚先生からのありがたきアドバイスをいただきました。

うさぎ、うさぎね・・・。何を隠そう、わたしはインターネットでうさぎとねこが登場する漫画を10年以上描いているのです! 得意分野! 庭! もはや心の中で飼っていると言っても過言ではないぐらい連れ添った仲なんです。

つまりポテンシャル的には、手塚先生を凌駕するレベルのうさぎを創ることだって可能。「敗北」の二文字を突きつけてやろうじゃありませんか。

  

 

  

●飴細工を実際に作ってみよう  

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まずは常人には触れないほどの熱々のアメちゃんをこねて柔らかくし、丸く形を整えたら黒い棒に突き刺します。

 

 

  

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まずは耳にあたる部分を作るべく、ハサミで頭の辺りを2回切ります。切った部分を立てることで、耳になるんですね。アメちゃんを切った感触はかなりしっかりとした固さで、ほんとに「チョキン」という音が出ました。

 

 

 

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うん、耳ですね。どう見ても耳だ。

 

 

 

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こちらが先生の。うん、同じ同じ。

 

 

  

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次に前足・後ろ足の計4本分を作るためにチョキチョキ。尻尾は指でつまんで形を整えるようにして作ります。

 

 

  

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先生のはこちら。前足をくにゅっとひねって躍動感を出していますね。わたしも同じく躍動感を出そうと思っています。

 

 

 

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ちょっと待ってくださいね・・・。もうすぐ出来るから・・・。

 

 

 

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先生のをチラっと見てみましたが、ほぼ出来上がってます。

 

 

 

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そんな感じでわたしも出来ました。最後に、顔を描いて完成です!

 

 

  

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ご覧ください。こちらがわたしの処女作「うさぎ」です。かわいい表情ですね。前足もちょこっと突き出て良いとがり具合です。凍った路面ではこの前足を突き刺すことで歩きやすくなるのでしょう。

 

 

 

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横からの角度はこちら。もう皆さん予想できているかと思いますが、このうさぎは完全に妊娠しています。お腹のやわらかな曲線が母性を彷彿とさせますね。

 

 

 

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後ろからの角度です。ご覧ください。この月へ向かっているかのような躍動感!

 

 

 

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せっかくなので月に向かわせてみました。本当に飛んで行ってます!

早くモチをつきたいのでしょうか? 好きなだけつけるといいですね。

 

  

 

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手塚先生が作ってくれたうさぎ(念のため注釈を入れると、左です)と並べてみました。なるほどなるほど。

 

  

 

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やった~!

 

 

 

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よっしゃ~~~~!!!

 

・・・そろそろ取り繕うのも限界がきたので白状しますが、めっちゃ難しかったです。変に傾けてしまうとどろーんと垂れてきてしまうし、さらに本当にすぐに固まってしまうので焦りと緊張が極限まで高まりました。まさに時間との勝負。

顔を描くことでギリギリうさぎに見えましたが、その前は本当に何でも無い「変な形のアメちゃん」に過ぎなかったですね。

 

  

 

●色々話を聞いてみた

ここからは、先生の手塚新理さんに、色々なお話をうかがいました。

 

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ー 何度も聞かれたかと思いますが、飴細工をやり始めたきっかけは何でしょう?

 

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国立高専の機械科を卒業して数年働いたあと無職になったんですが、その時に子どもの頃に父親から「ものづくり好きだし、飴細工職人にでもなったら?」と何気なく言われたことを思い出した・・・というのがきっかけですね。

そもそも飴細工は作っている過程を誤魔化すことができなくて、作っている過程をダイレクトに伝えることができる。自分の腕次第でどこまでもいけるなっていうところに魅力を感じたんです。

 

ー 確かに、「はい、出来上がりはこちらです」って完成品をいきなり出すと嘘くさくなっちゃいますね。

 

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でも業界自体が滅びかけているという側面があって、教わる環境や働く環境が一切なかったんですよね。そこで「よし!とりあえず独学でやってみよう!」と思って、実家に引きこもって半年ぐらいひたすら飴をこねていました。

 

ー 独学で! でも幼い頃からものづくりに興味があったのなら、むしろ自然なことかもしれませんね。

 

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そうかもしれません。で、いい加減貯金も無くなってきたので、ハッタリでもいいのでまずはサイトを作っちゃおう!と思いました。「飴」と自分の名前「新理」を足した「アメシン」という名前を3秒で決めてサイトを立ち上げたんです。

 

ー なるほど。店舗などは当初はどうしてたんですか?

 

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最初はイベント会社に営業をかけて、出張の仕事を主に活動していました。もちろん当時はそれだけで食えるという状況では無かったので、昼間にデザインの仕事やバイトをしながら、細々とチカラをつけていた感じですね。

 

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ー 地道な活動が実を結んで、店舗を構えることができたんですね。ちなみに、国立高専の機械科に進んだというのも、幼いころからものづくりに興味があったからなんでしょうか?

 

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父親が日曜大工好きで。工具がひと通り家に揃っていた影響もあり、幼い頃からモノづくりがすごく好きだったんですよね。親の教育方針も「欲しいものは自分で作れ」というような感じで木片を渡されるような環境で育ちました。まぁ、貧乏だったんですけど(笑)。

将来を考えたときに「モノづくりができる」ことと、「田舎から抜け出せる」ということで親元を離れ、国立高専の機械科で寮生活をしながら勉強しました。

国立高専は卒業後にエンジニアになったり、大手企業の研究職になったりする人が大半なんですが、若さゆえに刺激を求めていたのか、「もっと面白いことができないか? もっと刺激のあるものはないか?」と考えていたんです。そこで思いついたのが、花火師でした。

 

ー  えっ、花火師?

 

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飴細工をやる前は、花火師だったんですよ。

 

ー 飴細工の前に花火師! すごい経歴ですね!

 

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そうなんです。「刺激」「手仕事」「モノづくり」っていう三拍子が揃っていたので。そこから思い立ったら行動は早くて、在学中に火薬の国家資格を取得して、花火屋の門を叩きました。若い人も少なかったのでバイトですぐに雇ってもらえましたね。

 

ー 若さゆえのフットワークですね。花火師としてのキャリアはどれくらい積んだんでしょう?

 

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バイトと正社員で1年ずつ、合計2年ですね。すぐに辞めてしまったのは、中国から輸入してきた花火を使う業者が増えてきた・・・という花火業界の現状を垣間見てしまったからなんです。もちろん国内でも職人の手で素晴らしい花火を製造しているところもありますけどね。

 

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鍛冶職人の多い新潟県燕三条でオーダーした専用の鋏

 

 

ー では、我々が馴染みのある花火大会も中国製がほとんどってことですか?

 

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残念ながらそうなんですよ。例えば花火の打ち上げ時に「ピュー」という音。実はあの音を出すためには、日本では扱えない火薬を使わないといけないんです。そこは良し悪しかもしれません。

 

ー 日本の風物詩だと思っていたのに・・・。

 

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花火を発注するクライアントは、打ち上がった瞬間にしか商品を見れないんですよね。業界の縮小、人材不足など世の中の流れ的に、より人件費の安い中国に発注するのは仕方ないのかもしれません。もちろん中国の花火もクオリティは高いのですが、幼いころからモノづくりに携わってきた自分として「これでいいのか」って思って。そんな現状を見てしまって、しばらく上の空で仕事してましたね。

 

ー 下手したら死んじゃいますね。

 

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本当に冗談じゃなく死と隣合わせですからね。打ち上がらなくて爆発しちゃうと、燃える粒が散弾銃みたいにはじけ飛んで、体に突き刺さって死にますから。

 

ー え・・・

 

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その状況は「星が刺さる」と言われています。

 

ー その専門用語怖すぎる!

 

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そんな感じで上の空で仕事していたら、本当に星が刺さっちゃいそうなので、先輩に相談したんです。そしたら「そんな上の空でうっかり死んだら割に合わない。お前が死ぬだけじゃ済まないし、周りを巻き込む危険性がある。まだ若いんだから、次のスタートを切っちゃえばいい」と背中を押してくれたんです。

 

ー 理解ある先輩がいてよかったですね。しかし本当に危険なんですね・・・。

 

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もちろんです。もし花火が打ち上がらずに暴発してしまったら、走って逃げずに伏せましょう。花火の粒は地面と並行にまっすぐ飛んでくるので、伏せていると助かる確率が高まります。それでも背中は大やけどしますが・・・。

 

ー もしその時が来たら、伏せます!!・・・さてさて、だいぶ話が逸れてしまいましたが、今後やってみたいことはありますか?

 

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そうですね。実は僕、テクノに合わせてうどん粉を踏んで、そのうどんを食べる音楽イベント「テクノうどん」を主催しているんですが・・・

 

ー すみません、情報の洪水が起こって処理しきれませんでした。詳しく教えてください。

 

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もうそのままですよ。「クラブハウスでテクノの音楽を聞く」→「その音楽を聞きながら、床に置いているうどんをこねる」→「そのうどんを食べる」、それがテクノうどんです。このイベントの主催をしていて、そちらももっと盛り上げていきたいですね。

 

ー そんな独特すぎるイベントがあるんですね・・・。

 

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そこでDJもやってます。

 

元・花火師で現・飴細工職人 兼 DJ~~~~!?

 

 

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話しているうちに、お客さんが数名やってきました。

飾られている作品を「すごいすごい!」と驚きながら鑑賞し、そのままひつじをリクエスト。慣れた手つきで作り始めましたが、それをまじまじと見つめています。この「作る過程をごまかすことができない」というのが花火師の時との大きな違いで、職人としての腕の見せどころですね。 

後半はほとんど花火の話になってしまいましたが、手塚さんのものづくりに対する情熱はまさに熱した飴のように熱々で、とても心に響きました。

そんな「浅草飴細工 アメシン」さんでは、体験教室も随時開催しています。何でも出来上がったものがすぐに手に入る飽食の時代に、一手間かけて自分の手で何かを作ってみるのもオツなものですよ。

 

 

●手塚先生の飴細工作品集

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●店舗情報

浅草 飴細工 アメシン

http://www.ame-shin.com/

営業時間:11時~18時(木曜定休)

住所:〒111-0024 東京都台東区今戸1-4-3 1F

各浅草駅より徒歩10~15分

※飴細工の体験教室は大人=2,500円、子ども(高校生以下)=2,000円

●テクノうどん

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「テクノの音楽に合わせて、うどんを踏んだらどうだろう?」という発想のもと、2012年より始まったイベント

http://techno-udon.com/

■次回 4/4(土)7:00~23:00

■会場 東京タワースタジオ

■出演 真鍋大度、黒瀧節也、小西康陽 and more

 

●ライター:まきの ゆうき

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株式会社バーグハンバーグバーグに所属する人。前世が罪人だったのか、天然パーマという重い十字架を背負って生まれてきた。 Twitter:@yuuki

                             
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